美しい琥珀色が印象的な
ウイスキーとブランデー。
どちらも蒸溜酒の仲間ですが、
ウイスキーの主原料は穀物で、
ブランデーの主原料は果物です。
違うところ、似ているところ、
それぞれの種類やつくり方などをさらに知って、
もっともっと、ウイスキーとブランデーを
愉しんでみませんか。
穀物を主原料とし、
木製の樽で貯蔵・熟成した蒸溜酒
穀物とは主に大麦麦芽(モルト)やとうもろこしなど。
小麦やライ麦などが使われることもあります。
また、「木製の樽で貯蔵・熟成」することが定義づけられているのが大きな特徴です。
ウイスキーの語源は「命の水」
ラテン語の「アクアヴィテ(aquavitae)」“命の水”を由来とするゲール語「ウシュク・ベーハー (Uisge-beatha)」が変化を重ね、やがて「ウイスキー(WhiskyまたはWhiskey)」になったと言われています。
シングルモルトって何? グレーンって何?
大麦麦芽(モルト)が主原料のウイスキーはモルトウイスキー、とうもろこしなど大麦麦芽以外の穀物が主原料のウイスキーはグレーンウイスキーと分類されます。さらに製法によりシングルモルトウイスキーやブレンデッドウイスキーなどに分けられます。
シングルモルトウイスキー
ひとつの蒸溜所でつくられたモルト原酒だけをヴァッティング(混和)したウイスキー。蒸溜所ごとの個性が強く表れます。
シングルカスクウイスキー
モルト原酒の中から特別に選ばれたひとつの樽のウイスキーを、簡単なろ過のみでそのまま瓶詰めしたウイスキー。その樽の量しか同じ味わいのものはなく、数量限定品となります。
ピュアモルトウイスキー
複数の蒸溜所でつくられたモルト原酒をヴァッティング(混和)したウイスキー。「ブレンデッドモルトウイスキー」とも呼ばれます。
グレーンウイスキー
とうもろこしなどを主原料に、原料の一部に大麦麦芽を加えて連続式蒸溜機で蒸溜したウイスキー。主にブレンド用としてモルトウイスキーを引き立てます。
ブレンデッドウイスキー
モルト原酒とグレーン原酒をブレンド(混和)したウイスキーです。さまざまなタイプのモルト原酒にグレーン原酒を加え、緻密なバランスでブレンドされます。
モルトウイスキーを蒸溜する単式蒸溜器
世界のウイスキーを見てみよう
長い歴史と伝統、品質の高さなどから、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本のウイスキーが世界の五大ウイスキーと称されています。 さらに近年、ウイスキー製造は世界中に広がり、活況を呈しています。中でもヨーロッパ諸国、インド、台湾、オーストラリアなどが生産量を伸ばし、評価を高めています。
スコッチウイスキー
(SCOTCH WHISKY)
スペイサイド、ハイランド、ローランド、アイラ島など地域や蒸溜所ごとに多様な個性のモルトウイスキーを生産。さらに多くのブレンデッドウイスキーがつくられています。
アイリッシュウイスキー
(IRISH WHISKEY)
ピートを焚き込まず、3回蒸溜を行うのが伝統であり、主流。軽やかでスムースな味わいのウイスキーが多いのが特徴です。
アメリカンウイスキー
(AMERICAN WHISKEY)
とうもろこしを主原料としたバーボンウイスキーやテネシーウイスキーが有名。内側を焦がした新樽で熟成します。ライ麦を主原料とするライウイスキーもつくられています。
カナディアンウイスキー
(CANADIAN WHISKY)
ライ麦などが主原料のフレーバリングウイスキーと、とうもろこしが主原料のベースウイスキーをブレンドしてつくられます。ライトな味わいで、カクテルによく使われます。
ジャパニーズウイスキー
(JAPANESE WHISKY)
ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝がスコットランドに留学したことから、スコッチの流れを汲んで発展。特に2000年代以降、その品質が世界で評価され名声を高めました。
「WHISKY」と「WHISKEY」、
なぜスペルが二通りあるの?
“ウイスキー”の英語の綴りには「ky」と「key」の二通りがあります。「ky」はスコッチ流、「key」はアイリッシュ流。もともと「e」の有無は曖昧で、両国で使われていました。その後、19世紀末にアイルランドの業者連合がスコッチのグレーンウイスキーと一線を画すため「Whiskey」を使うと発表し、現在に至ります。 アメリカンウイスキーのブランドは「key」が多い一方で「ky」もあり、創業者の家系によるものと言われています。また、日本のウイスキーは、竹鶴政孝が学んだスコッチの系譜から「ky」が使われています。
ウイスキーの飲み方・愉しみ方
好みや気分に合わせて、食事に合わせて、水や炭酸水でアルコール分を調整しながらさまざまなスタイルで愉しめます。
ストレートやロックは、チェイサー(冷たい水など)とセットで飲むのがおすすめです。
ストレート
常温のウイスキーをグラスに注ぎ、水や氷を加えずにそのまま味わいます。ウイスキー本来の香りと味わいを愉しめます。
オン・ザ・ロック
大きめの氷をグラスに入れ、ウイスキーを注いだら適度にステアしてウイスキーと氷となじませます。
ハイボール
グラスに氷をたっぷり詰めて、ウイスキー1:冷たい炭酸水3を目安に注ぎ、軽くステアします。飲みやすく爽快な飲み心地です。
水割り
小ぶりのグラスに氷を入れ、ウイスキー1:冷水2~2.5を注いでよくステア。やわらかな飲み心地で和食にも合います。
ホット
お湯で温めたグラスに、ウイスキー1:熱湯2~3を注ぎます。砂糖やレモンスライスなどを加えるとより飲みやすくなります。
フルーツやスイーツにかけて愉しむ
カットフルーツやアイスクリーム、プリンなどにかけて。
チーズケーキやシュークリームにしみこませて。ひと味違った大人のデザートを愉しめます。
果実を主原料とする蒸溜酒
主に白ぶどうを原料とするグレープブランデーと、
それ以外の果実(りんご、さくらんぼ、洋梨、ベリー類など
さまざま)を原料とするフルーツブランデーに大別されます。
多くは木製の樽で熟成されますが、
木樽を使わない無色透明のブランデーもあります。
ブランデーの語源は「焼いたワイン」
フランス語の“焼いたワイン”「ヴァン・ブリュレ(vin brule)」を、オランダの商人がオランダ語の「ブランデウェイン(Brandewijn)」として広め、英語では「ブランデー(Brandy)」に。なお、フランスでは“命の水”を意味する「オー・ド・ヴィー(Eau de vie)」と呼ばれています。
[ 原料・原産地による区別 ]
コニャックとアルマニャックの違いは?
地産の果実を原料に世界中でつくられており、中でもフランスが一大生産国です。さらに「コニャック」、「アルマニャック」など地域ごとに区別されているものもあります。
コニャック
[ 原料/白ぶどう ][ 原産地/フランス ]
フランス南西部のコニャック市を中心とする地域で生産されるグレープブランデー。フランスの原産地呼称統制(AOC)による厳格な規定をクリアしたものだけが「コニャック」と名乗れます。単式蒸溜器で2回蒸溜し、木樽での熟成が必須。芳醇な香りとまろやかさ、エレガントな風味が特徴です。
アルマニャック
[ 原料/白ぶどう ][ 原産地/フランス ]
コニャック地方より南のフランス南西部に位置するアルマニャック地方で生産。原産地呼称統制(AOC)による規定をクリアしたものが「アルマニャック」と名乗れます。伝統的な半連続式蒸溜器でゆっくりと1回蒸溜して樽熟成。コニャックと比べて骨太で野性的な風味が特徴です。
カルヴァドス
[ 原料/りんご ][ 原産地/フランス ]
フランス北部のノルマンディー地方とブルターニュ地方で生産されるアップルブランデー。カルヴァドス県産が有名で、規定を満たした両地方のものを「カルヴァドス」と呼びます。寒冷な気候がぶどう栽培に適しておらず、地域名産のりんごを使った香り高いブランデーが生み出されました。
カルヴァドス
グラッパ
[ 原料/ぶどうの搾りかす ][ 原産地/イタリア ]
ワイン用にぶどうを搾汁した後に残る皮や種などを発酵させて製造。樽熟成しないものが主流ですが、フランスで同様につくられる「マール」はコニャックなどと同じく樽熟成されます。なお、スペイン、ポルトガル、ドイツなどでも古くから“かす取りブランデー”がつくられています。
キルシュワッサー
[ 原料/さくらんぼ ][ 原産地/ドイツ、スイス、オーストリアなど]
さくらんぼ果汁を発酵させ、蒸溜したフルーツブランデー。樽熟成はせず、無色透明の爽やかで甘い香りを持つお酒です。「キルシュ」はドイツ語でさくらんぼ、「ワッサー」は水。製菓用としてもよく使われます。
グラッパ
[ 熟成年数・クラスによる区別 ]
V.S.O.P.って何?
ブランデーはイギリスをはじめ英語圏で愛飲されたため、英文の略号を使ってクラス分けされるようになりました。「V.S.O.P.」はそのひとつで「Very Superior Old Pale」の略。「Very」非常に、「Superior」優良な、「Old」古い、「Pale」澄んだ、透き通ったという意味で、透明感のある琥珀色に由来する熟成感の高さを表しています。 国際的に統一された基準はなく、コニャックとアルマニャック、カルヴァドスの間でも基準が異なります。さらに世界各地のブランデーのクラス表記もまちまちのため、目安のひとつとして覚えておくといいでしょう。
| 混和原酒の熟成年数 | コニャック | アルマニャック | カルヴァドス |
|---|---|---|---|
| 最低1年以上 | V.S. (Very Special) | ||
| 最低2年以上 | V.S. (Very Special)、スリースター | V.S. (Very Special)、スリースター | |
| 最低4年以上 | V.S.O.P. | V.S.O.P. | V.S.O.P. |
| 最低6年以上 | ナポレオン | ナポレオン、X.O. | |
| 最低10年以上 | X.O. | X.O. | |
| 最低14年以上 | X.X.O. |
これ以外にもさまざまな表記があります。
ブランデーの飲み方・愉しみ方
ブランデーもウイスキーと同じように、水や炭酸水でアルコール分を調整しながらさまざまなスタイルで愉しめます。
ストレートやロックは、チェイサー(冷たい水など)とセットで飲むのがおすすめです。
ストレート
常温のブランデーをグラスに注ぎ、水や氷を加えずにそのまま味わいます。ブランデー本来の香りと味わいを愉しめます。
オン・ザ・ロック
大きめの氷をグラスに入れ、ブランデーを注いだら適度にステアしてブランデーと氷となじませます。
ソーダ割り
氷を入れたグラスにブランデー1:冷たい炭酸水3が目安。コニャックのソーダ割りは「フレンチハイボール」と言われます。
ジンジャーエール割り
グラスに氷を入れブランデー1:ジンジャーエール3を注ぎます。ブランデーの甘さがスパイシーなジンジャーエールと相性抜群です。
水割り
小ぶりのグラスに氷を入れ、ブランデー1:冷水2~2.5を注いでよくステア。フルーティーでやわらかな飲み心地です。
ホット
お湯で温めたグラスに、ブランデー1:熱湯2~3を注ぎます。ふんわりと甘く華やかな香りが立ち昇ります。